Spec & Technology
日本の歴史・文化・精神を、
ウイスキーという舞台に映す。
私たちは、日本酒蔵としての矜持をもとに、
精神性・手仕事・風土と向き合う姿勢を、
世界の酒文化に重ねあわせ、新たな形で表現していく。
定型や前例にとらわれず、
日本酒の発酵文化と和酒の叡智を総動員し、
日本固有の歴史・文化・伝統を映す一本を探究する。
真のジャパニーズウイスキーとは何か
──その暫定解を刻む。
「真のジャパニーズウイスキーとは何か」──
その問いに、百五十年余にわたり日本酒を醸してきた酒蔵として、ひとつの暫定解を示す。
東洋と西洋、和酒と洋酒──
異なる文化を織り込み、響かせ合い、昇華させる。
文化とは、差異が交わり、生まれ変わり続ける営みである。
当代の革新は、やがて未来の伝統を芽吹かせる。
その生成の只中に、哲学するウイスキー『哲/TETSU』がある。
清酒酵母 100% での発酵「日本酒技術の応用」
日本酒蔵の核である「発酵」の主役、清酒酵母のみを用いた発酵。
従来は、麦芽との相性から困難とされてきた清酒酵母100%発酵を、
酒母や段仕込みの知恵を応用することで実現。
吟醸酒のように低温長期で発酵させることで、
繊細な吟香や華やかな果実香を引き出す。
洋のウイスキーに、和の酒造りの叡智を注ぎ込む挑戦である。
改造型・国産ステンレス製蒸留器の採用「減圧蒸留の採用」
銅板による改造を施した、国産ステンレス製の減圧蒸留器を導入。
通常よりはるかに低い温度での蒸留が可能となり、
繊細な香味成分を守りながら雑味を抑え、透明感のある酒質を生み出す。
日本酒の「吟醸造り」の姿勢に通じる、丁寧で緻密な蒸留哲学である。
グレーンには酒米「吟醸粉」を使用
日本酒造りの精米の過程で生まれる吟醸粉(酒米)をグレーン原料に採用。
米特有の柔らかで上品な甘みと旨みがウイスキーに溶け込み、
他にはない日本的な輪郭を与える。
副産物を活かす知恵こそ、
日本古来の持続可能な酒造りの精神を映している。
国産木材を用いた「和樽」熟成の試み
日光杉をはじめとした国産木材を用いた和樽による熟成は、
ジャパニーズの未踏領域。
爽やかな杉香や穏やかな甘みを酒に映し出し、
世界でもここでしか得られない風味を形づくる。
日本の自然と工芸が融合した熟成文化を、
新たに切り拓いていく試みである。
風土を活かした複数の成熟庫の採用「小山・日光・大谷」
小山の寒暖差の激しい平地、日光の冷涼な森林地帯、大谷の地下採掘場──
異なる風土と環境がもたらす熟成環境を掛け合わせる。
気温・湿度・地質の差異がウイスキーに多層的な表情を与え、
複雑さと奥行きを生む。
ひとつの蒸溜所でありながら、
多彩なテロワールを体現する熟成である。
国産モルトの使用「栃木県産・二条大麦」
栃木県は全国一の二条大麦産地。
肥沃な穀倉地帯で育まれる県産モルトを積極的に採用することで、
地の風土を酒に映し出す。
地の風土をそのまま映す、"地ウイスキー"の矜持を示す選択である。
井戸から湧き出す「日光山系の自然伏流水」が仕込み水
小山市は、二荒霊水をルーツとする日光山系の伏流水に恵まれてきた。
江戸時代より酒造りが盛んだった背景には、
この「程よく硬い中硬水」がある。
清酒では吟醸香を、ウイスキーでは上品で厚みのある味わいを生む──
創業当時から涸れることなく湧き続ける蔵の井戸水が、
今も全てを支えている。
Exploration
真正ジャパニーズウイスキーの暫定解
真のジャパニーズウイスキーとは何か──。
その問いに暫定解を刻み続けることこそ、私たちの使命である。
清酒酵母や吟醸粉、和樽、そして日光の水と風土。
試みと挫折、そして再挑戦を繰り返す探究の中から、日本酒蔵ならではの哲学するウイスキーが生まれた。
その独創性と革新性は、アジア最大級の品評会TWSC2025で
「INNOVATOR OF THE YEAR(ベストディスティラリー賞)」として評価され、
さらにローマ教皇庁や台北駐日経済文化代表処への献上という
歴史的な瞬間を刻むに至った。
しかし、哲は完成を拒む。
次なる問いが、常に私たちを待っている。
探究は続き、暫定解は未来へ更新されていく。